「会社員が一番安定している」「個人事業主は経費が使える」「マイクロ法人を作ると社会保険が安くなる」。

よく聞くけれど、結局のところ同じ500万円を稼ぐなら、どの働き方が一番お金が残るのか。

今回は感覚ではなく、2026年の制度を使って4パターンを同じ土俵で比較しました。

なぜ、このテーマを調べようと思ったのか

実はこれまで、会社員、個人事業主、法人経営、そして法人を経営しながら個人事業も行う、という働き方をそれぞれ経験してきました。

その時々では「今の働き方」で目の前の仕事をしてきたけれど、社会保険や税金、扶養、経費、法人と個人の違いまで含めて、どの働き方が実際に一番お金が残るのかを同じ条件で比べたことはありませんでした。

そして最近、子どもや扶養、税金のことを改めて考えるタイミングが来ました。

  • 会社員に戻るのか
  • 個人事業を続けるのか
  • 会社員をしながら副業として事業を持つのか
  • 個人事業と小さな法人を組み合わせるのか

選択肢がいくつかあるからこそ、一度感覚ではなく数字で整理してみようと思ったのが、今回の研究のきっかけです。

自分自身の判断材料として調べ始めたテーマ。

同じように働き方を考えている人にも使える比較になるよう、できるだけ条件をそろえて検証してみます。

比較する4つの働き方

  1. 会社員一本:給与500万円
  2. 会社員+個人事業主:給与400万円+副業売上100万円
  3. 個人事業主一本:売上500万円
  4. 個人事業主+マイクロ法人:個人売上400万円+法人売上100万円

事業があるケースの必要経費は年間30万円。青色申告特別控除は65万円を使える前提です。

マイクロ法人は、法人売上100万円、役員報酬月5万円(年60万円)で試算しました。

先に結果

年間手残り比較

個人で自由に使える現金だけを見ると、このモデルでは会社員一本が約388.5万円で最も大きくなりました。

ただしマイクロ法人は、個人に約376.2万円残るほか、法人内に約13.6万円残る試算です。

マイクロ法人の個人と法人の手残り

つまり「手残り」を今すぐ個人で使えるお金と定義するか、法人内も含め自分が管理する資金と定義するかで見え方が変わります。

そもそも「500万円」は同じ500万円ではない

会社員の500万円は給与収入です。一方、個人事業主の500万円は売上。ここから経費30万円を払い、残った470万円が利益の入口になります。

さらに給与には給与所得控除、事業所得には必要経費と青色申告特別控除があります。

所得金額比較

2026年分の給与所得控除は、給与500万円なら144万円。給与400万円なら124万円です。

個人事業では、青色申告の要件を満たしe-Tax等を使えば最大65万円の青色申告特別控除が使えます。

1. 会社員一本:給与500万円

給与500万円から給与所得控除144万円を引くと、給与所得は356万円。

社会保険は協会けんぽ・厚生年金・雇用保険を合わせ、今回のモデルでは本人負担を約75.4万円と試算しました。所得税は約11.7万円、住民税等は約24.4万円。

個人の年間手残り:約388.5万円

制度がシンプルで、確定申告や法人維持も原則不要です。

2. 会社員400万円+副業100万円

給与400万円の給与所得控除は124万円なので、給与所得は276万円。

副業は売上100万円-経費30万円=70万円。ここから青色申告特別控除65万円を引くと、事業所得は5万円になります。

給与所得276万円+事業所得5万円=合計所得281万円。社会保険は原則として会社の給与を基礎に計算されるため、個人事業の利益がそのまま厚生年金・健康保険料へ上乗せされる構造ではありません。

今回の試算では、社会保険約62.5万円、所得税約6.7万円、住民税等約18.1万円。経費30万円も実際に支出するので、

個人の年間手残り:約382.7万円

ここで重要なのは、青色申告65万円は給与400万円を直接65万円削る制度ではないこと。副業の事業所得70万円を5万円まで圧縮しているだけです。

3. 個人事業主一本:売上500万円

売上500万円-経費30万円=470万円。青色申告特別控除65万円を引くと、所得税計算上の事業所得は405万円です。

会社員と大きく違うのが社会保険。国民年金は2026年度で月17,920円、年215,040円。国民健康保険は自治体によって違うため、今回は具体的な比較用モデルとして郡山市2026年度の料率を使用しました。

40〜64歳・1人世帯モデルでは、国保と国民年金を合わせて約70.0万円。

さらにコンサルタント業など個人事業税の法定業種に該当する場合、事業主控除290万円を超える部分に個人事業税がかかります。今回は約9万円。

所得税約17.3万円、住民税等約29.8万円。

個人の年間手残り:約343.9万円

「経費にできるから個人事業主は得」と単純には言えません。国保・国民年金と個人事業税の影響がかなり大きく出ました。

4. 個人400万円+マイクロ法人100万円

ここが一番複雑です。

個人事業は売上400万円-経費30万円=370万円。青色65万円控除後の事業所得は305万円。

法人は売上100万円、役員報酬を月5万円=年60万円に設定。

法人事業所は、代表者1人だけでも健康保険・厚生年金の適用事業所になります。低い役員報酬でも厚生年金には最低の標準報酬月額があるため、「5万円に保険料率を掛ければ終わり」ではありません。

今回の試算では本人負担社会保険約13.6万円、法人負担約14.0万円。個人側は所得税約10.8万円、住民税等約25.4万円、個人事業税約4万円。

個人で使える年間手残り:約376.2万円

法人側には、役員報酬と会社負担社会保険、法人税等を払った後に約13.6万円が残る試算です。合計すると、自分の管理下に残る資金は約389.7万円。

ただし、法人に残った13.6万円は個人のお金ではありません。生活費として自由に引き出せるわけではない点は重要です。

何がこれほど差を作るのか

手残り差を作る3要素

社会保険

会社員は健康保険・厚生年金を会社と折半します。個人事業主は国保+国民年金。マイクロ法人は法人の役員として健康保険・厚生年金へ入るため、役員報酬の設定によって負担構造が変わります。

青色申告特別控除

65万円控除は強いですが、無条件ではありません。事業所得等があり、複式簿記・期限内申告などの要件を満たし、65万円控除ではe-Taxまたは一定の電子帳簿保存が必要です。

また、副業が税務上「事業所得」ではなく「雑所得」と扱われる場合、この比較どおりにはなりません。

経費

30万円を経費にしたら30万円得するわけではありません。

30万円は実際に出ていくお金です。メリットは、その30万円を所得計算から差し引けるため、その分にかかる所得税・住民税等を抑えられること。必要経費にできるのは事業のために必要な支出だけです。

じゃあ、会社員+副業は弱いのか?

今回の数字だけ見ると会社員一本388.5万円に対して、会社員+副業は382.7万円。

でもこれは副業側で30万円を実際に使っているからです。

もしこの30万円が「どのみち仕事のために自分で支払う支出」だったとすると、見え方は変わります。

会社員一本では原則として一般的な仕事関連支出を自由に必要経費にはできません。一方、事業所得なら事業に必要な部分を必要経費にできます。

会社員+副業の強さは、会社員として社会保険の基盤を持ちながら、事業側では必要経費と青色申告を使えること。

今回の結論

働き方個人手残り法人内残
会社員一本約388.5万円―
会社員+副業約382.7万円―
個人事業主一本約343.9万円―
個人+マイクロ法人約376.2万円約13.6万円

今回分かったのは「この働き方が絶対に最強」ということではありません。

会社員として働くなら、会社員+小さな個人事業には制度上かなり面白い構造がある。

独立するなら、個人一本とマイクロ法人併用では社会保険と法人固定費まで含めて比較する必要がある。

そして一番危ないのは、「経費にできる=得」「法人を作る=節税」と一部分だけ見て決めることでした。

試算条件と注意

  • 年間収入・売上合計500万円
  • 事業があるケースの必要経費30万円
  • 青色申告特別控除65万円
  • 40〜64歳、扶養なし
  • 住民税は平年ベースで概算
  • 国保は郡山市2026年度料率をモデル
  • 会社員は協会けんぽ福島支部をモデル
  • マイクロ法人は役員報酬月5万円
  • 消費税、iDeCo、小規模企業共済、生命保険料控除、扶養控除等は除外
  • 法人設立初期費用や税理士報酬は除外
  • 個人事業税はコンサルタント業等の5%対象業種として試算

実際の税額・保険料は家族構成、自治体、業種、控除、標準報酬月額、前年所得等で変わります。

参考にした公的資料

RESEARCH 002 / COMPLETE

数字にすると、思っていたより単純じゃなかった。

次は年収800万円や家族ありのケースでも同じ比較をしてみます。

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